あいちの注目企業

2024.03.01
最先端技術が最先端ニーズを制す
前田工業株式会社
代表取締役社長 前田利光
東海市名和町四ノ下22

 今回は1950(昭和25)年に創業した前田工業株式会社(以下:前田工業)です。
 前田工業はレーザ加工のラボ機能を保有し、しかも貸し切りで使用できるため、企業の研究分室の役割(R&D)も担うことができます。まさにレーザ技術に特化したサービス産業という新しい業態を提案している「あいちの注目企業」です。そして地域行政から地域に必要な企業と認められているのが前田工業です。
 本社は東海市にあります。車の場合は名古屋高速4号東海線東海JCTを出て愛知製鋼(株)を左手に見ながら約10分の場所です。公共交通機関の場合は、名鉄常滑線「聚楽園駅」から北へ徒歩10分程の場所です。本社から車で約5分の場所に東海工場があります。
 聚楽園駅の前にある小高い聚楽園公園の木々の上には高さ約18mの大仏さま(コンクリート製)が鎮座しています。1927年に、昭和天皇のご成婚を記念して開眼供養されました。奈良や鎌倉の大仏よりも大きいです。小高い場所のため、眼前には製鉄所などの立ち並ぶ工場風景が飛び込んできます。

会社の沿革

1950(昭和25)年        前田工業(株)を設立し、金属製品加工を開始
1955(昭和30)年        溶接、製缶加工を開始
1970(昭和45)年        大江工場建設 設計部門を整備し、機械設備工事の総合受注体制を強化
1982(昭和57)年        東海市名和町の現所在地に新工場を建設し、本社並びに工場を集約
1989(平成元)年        1kWレーザ加工機を導入、精密部品加工開始
2005(平成17)年        東海工場完成 2kWレーザ切断機11号機導入
2012(平成24)年        シームトラッキングレーザ溶接加工ヘッド「LEXA」を開発
            30kWファイバーレーザ導入 3kW半導体レーザ導入
2018(平成30)年        高速度2方向同時X線透視検査システム導入
2022(令和 4) 年        10kW AMBレーザ導入

 74年前、製鉄会社の製造設備機械を請負う会社として始まりました。炉から出てきた高熱・高温の鉄鋼をローラーで引き延ばす機械など、製鉄会社から「自動化設備」の製作依頼を受けていました。仕事の99%が製鉄会社でした。転機は平成元年です。バブル経済崩壊の危機により受注先1社体制からの多角化へ迫られました。このとき、セラミックなど対象業界を検討する中で「レーザ」に的を絞りました。
 1990年、前田利光氏(現在の代表取締役社長 以下:前田社長)が当時の社長から命を受け、レーザ光線を学ぶために中部レーザ応用技術学会へ入会し、沓名 宗春(くつな むねはる)名古屋大学工学部教授に師事して会社はレーザ加工を新しい事業に据えました。
 レーザ加工は、レーザ光をレンズを使って収束させて極めて狭い範囲に高いエネルギーを集められます。 これによりワークへの溶込み幅を小さなキーホールででき、熱影響層も広がりにくいため熱歪みの発生を抑えられます。

事業内容

〇トータルソリューション提案のレーザ事業部
 自動車、航空機、宇宙ロケット、エネルギー、電気、電子、鉄鋼、産業機械等の製品に対して、レーザ溶接・溶着・切断・孔あけ・表面改質(焼入れ、チル化、クラッディング、合金化)の次世代加工技術をトータルに提案しています。新たなニーズに対する開発については、機密保持に細心の注意を払う中で基礎実験~試作~量産加工まで対応しています。
※その対応場所が東海工場ですがセキュリティー上、取材見学はNGになっております。

〇オーダーメードの機械設備事業部
 省人化・無人化のためのオーダーメードの機械設備や搬送設備の企画・設計・製作と鋼構造物・製缶溶接・配管・機械加工などの加工組付、そして精密板金加工、特殊溶接加工を行っています。

レーザ工法開発のための7サークル

 レーザ加工機のレーザ光は、レンズで収束させてワークに当てます。強さやスポットの大きさを変えることで、溶接やワーク表面への文字や模様の描画、切断処理などが行えます。
 溶接位置を事前にモニタリング、キーホールモニタリング、加工点温度モニタリングなどを行い、フィードバックして適応制御し、AI機能を使って予測します。この予知機能を更に分析して溶接品質リアルタイム判定、溶接不良の予兆現象の察知、溶け込み深さ判定などの品質管理に活かすサイクルです。
 この体現に8年の時間を費やして開発したシステムがレーザ溶接合否判定モニタリングシステム 「LEXA VIEW」です。最先端技術ですがニッチな市場のため大企業は手控えています。

                            レーザ工法開発のための7サークル

レーザ溶接合否判定モニタリングシステム 「LEXA VIEW」

 レベルの高いレーザ溶接作業と並行して温度測定管理を可視化したレーザ溶接専用モニタリングシステム「LEXA VIEW」がレーザキーホールやその周囲の溶融池の変化量を定量化して、デジタルデータとして記録したり、インプロセスで溶接品質を合否判定するモニタリングシステムです。

〇LEXA OCTは、レーザ溶接中に形成されるキーホールの断面形状及び3D形状が測定できます。
〇LEXA THERMOMETERは、レーザ溶接中の溶融池や溶接ビード、熱影響部の発光をカメラで捉えて、温度分布を可視化・定量化します。温度分布を可視化した熱画像や、温度の測定結果を基に、良好な溶接条件を導き出し、溶接状態を管理することが可能です。
〇一例ですが瞬時に様々なことが可能になります。
 ・温度測定も可能 溶接しながら温度分布が分かります。
 ・レーザ溶接中に形成されるキーホールの断面形状及び3D形状が測定できます
 ・溶接スパッタの発生を瞬時に捉えるスパッタ検知機能(50ミクロンのスパッタを検知)もあります。
 ・マイクロフォーカスエックス線を使って加工と同時に内部欠陥がわかります。

スプリングエイト 東京大学と共同研究

 SPring-8とは、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設です。この施設を使って東京大学と共同研究も進めます。これは、精密工学会の講演を通じて実現した研究です。2024年4月より、中部レーザ応用技術研究会の新会長就任を受け、共同研究の実用化と産業界実装を目指します。

取材を終えて

 取材を通じて思ったことは、規模を追求するのでなく技術を追求して地域に必要な企業として成長する姿勢です。ニッチな市場でシンデレラゾーンを見極め、レッドオーシャンでなくブルーオーシャンを探して掘り当てる戦略が的中した企業の姿です。そして前田社長が言われた「最先端技術が最先端ニーズを制する」の言葉が印象に残りました。
 8年の時間を費やして開発したシステムは、専用の東海工場を使って他社に提供を行っています。
 東海市は製鉄の街ですがレーザ技術の街としての機能を発揮する契機となり、行政である東海市からも大いに期待されております。地域行政から地域に必要な会社と認められているのが前田工業です。

前田工業ニュース(最新レーザ技術紹介動画)
http://www.maeda-kogyo.co.jp/original10.html?mode=pc

レーザ溶接専用合否判定モニタリングシステム「LEXA VIEW」動画
http://www.maeda-kogyo.co.jp/original14.html

2024国際ウエルディングショー
https://weldingshow.jp/2024