あいちの注目企業

2023.11.01
自社ブランドで成長を遂げる
原ウール株式会社
代表取締役社長 西川保彦
名古屋市中村区名駅5丁目16-17 花車ビル南館705号

 今回は1952年設立の原ウール株式会社です。
 毛織物の一大産地であった「尾州」は海外の輸入に対抗できず衰退にあります。その中で生き残りに成功している「あいちの注目企業」です。
 糸の製造・販売メーカーとして一宮で創業しました。その後、本社を名駅近くに移転してから半世紀に渡ってこの場所で事業を行っています。これまでOEMを中心に、手芸用の手編み糸や生地を全国展開してきました。
 本社は名古屋市中村区名駅5丁目にあり、地下鉄桜通線「国際センター駅」から南へ徒歩数分のところにあります。もちろん各路線が集まる名古屋駅からも徒歩10分圏内のためアクセスは非常に良いです。

会社の沿革

1952(昭和27)年5月  原広次、山本政男が株式会社原商店を設立
1970(昭和45)年2月  現在の本社に移転 
1988(昭和63)年6月  原ウール株式会社に社名変更
1993(平成5)年8月    愛知県一宮市に商品センター開設
1997(平成9)年3月    丸高繊維(株)より手芸糸部門の譲渡を受け全国展開開始
2002(平成14)年7月  愛知県一宮市にテキスタイルセンター開設
2008(平成20)年7月  自社製品のビシュールBishwool、アンゴラアランを販売
2018(平成30)年3月  ネット販売開始

非同族経営

 代表取締役の西川保彦氏(以下:西川社長)は奥様が名古屋出身というご縁で15年前に関西の食品メーカーから転職されました。アパレル業界は初めて、もちろん名古屋も初めてです。原ウール経営者層との地縁血縁関係もありません。
 原ウールは非同族経営に重きを置いています。前々、前社長も社員を経て登用されました。同様に西川社長も社員の中から登用されています。

OEM(相手先ブランド製造)

 売上の中心はOEMです。主な取引先は全国の手芸専門店です。協力工場でOEM先にマッチした商品をつくることができる強さと、自社で生地の裁断加工技術と配送センターがあるため細かな受注への対応力がOEM先から信頼を得ています。

転機は新型コロナ

 5年前から通販(以下:EC)に取り組み始めました。出店当初はなかなか認知されない状態が続きましたが、転機は新型コロナの流行で、2020年3月以降は手作りマスクキットの販売により徐々に認知される事になります。
 また新型コロナによる巣ごり需要も手伝って自宅での手芸も広がりをみせる中で、初心者の30~40代の女性も気軽にできる毛糸や刺し子のキットなどを販売し、主力分野の手芸用品も認知してもらえるようになりました。

EC対応は自社で完結

 巣ごもり需要を上手く取り込むことができた理由は、企画からネット展開の準備まで自社で行っていることにあります。スタッフが日ごろ仕事で交わしているアイデアや会話を元に月2回のスタッフ8名による企画会議をしています。
 スタッフが作成した手作りスタジオで撮影、SNS、動画配信をすることで、よりお客様に寄り添ったコンテンツの提案ができるように心がけております。

EC展開の中で力を付けた自社ブランド

 原ウールオリジナルの手芸用品や手芸キットを企画販売しています。

 原ウールのオリジナル毛糸ブランドです。編み物ブックや編み物キットも数多く展開しています。

 「動物と花」をテーマにした北欧調のデザインオリジナルテキスタイルブランドです。

 原ウールの拠点である「尾州」産ウールを中心とした上質な生地をセレクト。
 また、尾州の魅力がたくさんつまったハギレセット、オリジナルバッグキットもあります。

 様々なバッグのキットや副資材をご提案するブランドです。尾州の生地や刺しゅうを取り入れたかわいい手づくりバッグを展開します。

取材を終えて

 尾州毛織物の中で手芸用品に特化したこと、しかも相手先ブランドのOEMに特化したこと、中小零細企業にある同族経営ではなく「非同族経営」に特化したこと、EC展開は自社で完結することに特化したこと(プラットフォームは楽天、ヤフーなどを使いますがそれ以外は社内展開です)に注目しました。
 巣ごもり需要が売上高に占めるECの割合を押し上げ、会社全体の売上を伸ばしていますが、残業や休日出勤がほとんどない働きやすい会社と西川社長から説明を受けました。「特化」に徹する考え方は、自然に無駄な考え方をそぎ落とすことに通じていると思います。
 今回は衰退が生じた産地産業の中で「特化」をキーワードに生き残るヒントを示した「あいちの注目企業」でした。