あいちの注目企業

2024.01.09
時代の流れとともに会社も変革
井桁堂株式会社
代表取締役社長 服部剛士
豊田市高岡町松葉145番

 今回は1974(昭和49)年設立の井桁堂株式会社(以下:井桁堂)です。
 井桁堂は名古屋の定番お土産ベスト10に入っている「名古屋ふらんす」を製造販売している会社です。
 「みそ煮込うどん」「ゆかり黄金缶」「青柳ういろう」「大須ういろう」「きよめ餅」は戦後から長い時間を経た中で築き上げた名古屋みやげです。他方、「名古屋ふらんす」は愛知万博以降に誕生した新しい名古屋みやげです。不動のみやげ物業界に割って入り、しかも新たなブランド「アーモンドマイスター®」を立ち上げて東京へ進出している「あいちの注目企業」です。
 本社は豊田市にあります。名鉄三河線若林駅から車で10分程の場所です(若林駅とトヨタ自動車堤工場の中間辺りです)。本社の1階は配送センター機能、2階が工場から納品された製品の詰め合わせ加工工場と事務機能を備えています。本社の外観はアーモンドのイラストが描かれ、周りにはアーモンドの木が植えられています。 工場は日進市(日進市藤枝町西外面)と豊田市(豊田市堤町西住吉)の2か所にあります。

会社の沿革

1974年 創業
1976年 株式会社ハートリー設立(菓子問屋:えびせんべい、菓子ギフト)
1980年 東京営業所開設
1981年 加工場移転
1983年 天白配送所開設、事務所・倉庫移転、直営店お菓子の森開店
1985年 本社社屋完成、加工場移転
1986年 井桁堂株式会社設立
1992年 冷生菓事業部開設、東京営業所移転
2001年 新本社社屋竣工、日進焼菓子稼動
2002年 東京営業所移転、日進工場ライン増設、新ブランド特別販売課発足
2003年 生工場ゼリーライン稼動、日進工場ライン増設
2004年 名古屋フランスcorp株式会社設立
     愛知万博(2005年)の前に「名古屋らしい」みやげを自社ブランドで考えました。
2012年 豊田工場竣工・稼動
2015年 サロン・ド・テ 名古屋ふらんす 直営本店開店
2017年 サロン・ド・テ 名古屋ふらんす あさひ長久手店開店
2018年 アーモンドライフ 販売開始
2019年 アーモンドマイスター 販売開始
2020年 井桁堂・ハートリー・名古屋フランス各本社を豊田市へ 移転
2021年 アーモンドマイスター グランデュオ蒲田店開店

始まりは小売店

 名古屋市内の公設市場でお菓子小売業が始まりでした。ダイエー、ユニー、ジャスコなど大型スーパーが台頭して直ぐに小売店経営に危機意識を持った代表取締役会長 服部幸三氏(以下:服部会長)はお菓子問屋業へシフトしました。そして他社との差別化を図るべく、あられやえびせんべいの加工を始め、メーカーとして井桁堂株式会社を設立しました。
 井桁堂の由来は有松絞りにあります。戦前は有松町で有松絞りを営んでおりました。今でも親戚筋に有松絞りの老舗「井桁屋」があり、そこから屋号の井桁を貰い「井桁堂」を掲げました。
 1991年に冷凍和菓子製造を開始し、販路の一つとして直販店としてひさご庵をイオン等(旧:ジャスコ)のテナントとして4~5店舗へ展開しました。
 転機は2005年。愛知万博の前に自社ブランドで「名古屋らしい」みやげを考えて大々的に展開しました。その成果を踏まえて更なる知名度浸透を図るため、2015年名古屋ふらんす直営店を設けました。

名古屋ふらんす誕生まで

 服部会長のご子息である代表取締役社長 服部剛士氏(以下:服部社長)が大学卒業して就職した会社が食品製造機械メーカーでした。井桁堂の工場運営に関わることを想定しての就職です。ここで食品工場に必要な機械ノウハウと機械納品先が展開している販売戦略(地道な試食販売)を学びました。
 名古屋銘菓「名古屋ふらんす」は、おもちをダックワーズでサンドしたユニークなお菓子です。ダックワーズはメレンゲ・アーモンドパウダーを使ったフランス南西部にある「ダックス」に由来のお菓子です。アーモンドの風味とメレンゲの独特な食感が特徴です。
 当初計画した包装パッケージの色はオレンジでした。Kiosk(キヨスク)など土産物売り場の店頭ではオレンジが目立たないことに気付きました。そこで思い切って青を使いました。食品業界で青色は、冷たい、美味しくないなどのイメージであまり使われていません。
 養老サービスエリアに電飾を付けた屋台を作り、大々的な試食販売を行いました。また、愛知万博会場でも日進市の地域エリアブースを使って大々的に試食販売を行いました。
 名古屋はミックス文化、よくばり文化、ごちゃまぜ文化と言われています。味変化を楽しむ「ひつまぶし」、海老天とおにぎり「天むす」、バタートーストに小倉餡「小倉トースト」などのミックス文化、喫茶店のモーニングサービスに代表されるよくばり文化、あんかけパスタ、台湾ラーメンのごちゃまぜ文化に通じる食べ物がたくさんあります。おもち(求肥)は和菓子自社製造でノウハウはあり、それをダックワーズでサンドする「名古屋フランス」が名古屋みやげとして誕生しました。

サロン・ド・テ 名古屋ふらんす

 サロン・ド・テ 名古屋ふらんすは、スイーツショップとカフェ・レストランを融合した名古屋ふらんすのサロンショップです。本店(2015年)はみよし市明知町立山15-1に、あさひ長久手店(2017年)は尾張旭市南栄町旭ヶ丘16-1にオープンしました。
 本店はモーニング&スイーツモーニング、ランチ、スイーツを展開しています。モーニングでは、フランスバターをふんだんに使ったクロワッサンにアーモンドのトッピングがあり、テレビのグルメ番組にも登場しています。
 あさひ長久手店は愛知県でここだけのみ扱っている「アーモンドマイスター®」の品ぞろえがあります。アーモンドを日々研究し、その魅力を知り尽くした菓子職人監修のもと、アーモンド本来の自然な風味と味わいを引き出す「低温ロースト製法」と「自家挽き」にこだわったアーモンドスイーツ専門店”「ALMOND MEISTER(アーモンドマイスター)®」です。

東京進出 アーモンドスイーツ専門店「ALMOND MEISTER(アーモンドマイスター)®」

 東京は昔から営業拠点があり、知らない土地柄でもありません。東京発の全国ブランドを作ることが次の挑戦です。「軸になるモノ」「美味しくて健康なモノ」を突き詰めると長年扱っているアーモンドでした。珈琲の自家焙煎と同じようにアーモンド粒をアメリカ西海岸(カリフォルニア)から輸入して国内自社で挽く方法に切り替えるなど、アーモンドの加工にこだわりを持っています。また将来的にはアーモンドの栽培にも関わりを持ち、アーモンドによる垂直統合を目指し、さらなるブランドストーリーをつくっていきます。
2021年4月 東京都大田区西蒲田7-68-1 グランデュオ蒲田 西館1Fがオープンしました。
2022年10月 東京都内2店舗目「ALMOND MEISTER®Refined(アーモンドマイスター®リファインド)」が新宿髙島屋地下1階にオープンしました。
2023年12月 東京都内3店舗目が有楽町マルイ1階にオープンしました。

SDGsに向けて

 フードロスをなくすために2020年「トヨタファーム(養豚場経営企業)」が扱っている「とよたひまわりポーク」の餌に井桁堂の豊田工場生産工程から出てくる不良品、廃棄原材料などの食品廃棄物を提供しています。
 本社で毎年4月に開催している地域住民との交流を目的とした「アーモンド祭り」にトヨタファームの代表取締役 鋤柄雄一社長が来られたことがきっかけでした。
 他方、サロン・ド・テ 名古屋ふらんす本店ではひまわりポークを使ったメニュー提案を行っています。
 2022年日進工場では、訳アリ商品の冷凍自販機設置を行っています。
 ゼリーで使う缶詰みかんのシロップは廃棄していました。2023年からは株式会社ビオクラシックス半田 へ引き取りされ、メタンガスのエネルギー化による発電・熱・排ガス供給事業の原材料の一部になっています。

取材を終えて

 取材を通じて思ったことは、時代の流れを上手くとらえて変化続ける愛知の企業です。しかも売上構成比はお土産、ギフト業界、一般流通向け、百貨店、OEMとバランスが取れています。
 小売りから卸売りへ、そして食品メーカーへと脱皮する中で、後発ながらみやげ物業界の中で地位を獲得するためのアイデアと試食販売の徹底には驚きました。特に養老サービスエリアへ服部社長が飛び込み営業し、電飾された屋台を使った試食販売が今の礎です。
 年末年始は多くの名古屋みやげが全国に運ばれます。名古屋ふらんすも新たに価格は据え置きして個数を増やした改良品やバレンタインに関連した期間限定商品などを提供します。

アーモンドマイスター YouTubeチャンネル 公開
https://www.youtube.com/channel/UCyFa6E0I015QIz-zEZObQIQ/featured