あいちの注目企業

2023.07.03
外部資源を活用して自社ブランドを確立
株式会社丸八化成
代表取締役社長 金田将典
名古屋市守山区川宮町673

 今回は創業半世紀近い町工場発のキャンプギアブランドOUROBOROS(ウロボロス)を立ち上げた株式会社丸八化成(以下:丸八化成)です。このブランドを引っ張る製品がアウトドアで大活躍する国産カラビナクリップです。
 丸八化成は、樹脂プラスチック製品で培ったノウハウと外部資源を上手く使って自社商品を開発した「あいちの注目企業」です。
 会社は名古屋市守山区川宮町にあり、JR中央線新守山駅から徒歩15分です。近くにアサヒビール名古屋工場があります。

会社の沿革

 丸八化成は1974年に創業、樹脂プラスチック製品の製造を半世紀にわたり手掛けてきました。創業当時は宝石箱の植毛加工、子供向け文具の筆洗いバケツなどを製造していました。平成19年1月法人化して創業者である父親(金田秀雄氏)から事業を引き継ぎ、ご子息の金田将典氏が代表取締役(以下:金田社長)に就任しました。現在は以下の製品製造を行っています。

・自動車内装部品の射出成型加工(車のシート周り)
・工業用プラスチック部品の射出成型加工(使い捨てコンタクトレンズケースなど)
・文房具・雑貨等のプラスチック製品の射出成型加工

 平成2年ごろから自動車部品へシフトし、その後、売上の9割を占めるまでになりましたが、1業種に集中するリスク回避から工業用プラスチック部品を扱いました。しかし、製品単価の価格決定権は元請けにあります。何とか自社商品を作れないのかと思案していました。また、コロナ禍では自動車部品メーカーも仕事量が減少し、見通しが暗いため、自社商品が必要と痛感していました。

自社製品のキッカケ

 金田社長は趣味のバイクで、仲間とツーリングに出かけます。バイクの運転にはグローブが欠かせません。途中のサービスエリアや道の駅等で休憩するときにバイクグローブを外しますが、その置き場所に困っていました。ベルトに簡単に取り付けるグローブホルダーがあればと考えて試作品を作りました。
 外部セミナーや勉強会で知り合った企業経営者(海部郡大治町にある側島製罐の石川貴也さん、東郷町にある石川製作所の荒川さんなど)に試作品を見せました。「40代男性が考えた色使い」、「用途が不明確」など厳しいコメントを頂きました。他方、愛知県産業労働センター(ウィンクあいち)14階(公財)あいち産業振興機構内にあるプロフェッショナル人材戦略拠点の情報を得ることも出来ました。

外部リソースの活用

 「愛知県プロフェッショナル人材戦略拠点」は、攻めの経営に向けた課題解決支援に向けて、地域の関係者と連携しながら副業・兼業などのプロフェショナル人材の紹介を行っています。
https://aichi-fukugyo.com/
 この人材戦略拠点を通じて、東京在住の製品開発から販路開拓の専門家であるプロ人材とのマッチングが出来ました。試作品の改良を進める中で専門家からMakuake(マクアケ)の活用提案がありました。
 Makuake(マクアケ)には資金を調達しながらも、ユーザーのニーズを汲み取ることができる仕組みが整っています。購入希望者(サポーター)の属性(性別、年齢、居住地、職業)などを確認できるため、デモグラフィック分析を実施することができます。

マクアケで先行予約受付をしたS型カラビナ

 Makuake(マクアケ)を活用して試作品をブラッシュアップし、2022年9月と2023年2月にビックサイト展示会ギフトショーに出展しました。このギフトショーへの出展を後押しいただいたのが側島製罐の石川貴也さんです。

      試作品のウロボロスクリップ(本社壁面に展示)
    ウロボロスクリップ

アウトドアにマッチした色と幅広い挟み口、片手で操作、目安耐荷重25kg(保証ではありません。)

       ウロボロスクリップ 朧(蓄光タイプ)

1時間ほど事前に蓄光した状態で辺りを暗くします。すると発光し始め、60分後でも薄く光っている状態です。

ネットワーク

 このギフトショーがキッカケとなり日本全国の町工場の自社製品開発を支援する事業「町工場プロダクツ」を知りました。
 合同会社メイカーズリンクの発起人として事業者を率いているのが埼玉県川口市で精密機械などの金属加工を行う栗原稔さん〈栗原精機の代表〉で、2021年本格的な活動としてスタートしたのが「町工場プロダクツ」です。
 そして2022年10月1日~11月17日の期間、渋谷ロフトにて日本全国25の町工場の製品を限定販売しました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000107581.html

新しい小さな自社製品

独自で自社製品 防犯カバー(2022年6月)
 防犯カメラを付ける場面に合う色のカバーを作りたいとの相談メールが届きました。幼稚園や神社などの天井等に防犯カメラを設置した場合、カメラカバーの色は決して周りの景観に馴染みません。そこで場所ごとの景観にあった色合いのカバーを小ロットで製造して欲しいニーズでした。

            防犯カバー

どこに注目 外部リソースの活用

 金田社長は1つの業種(自動車産業)の比率を下げるために会社のリフォームを行い、3交代制24時間稼働の工場へシフトしました。これにより自動車産業以外の工業部品製造能力の増強が出来ました。そして岐阜の協力会社を吸収してキャンプギアブランドOUROBOROS(ウロボロス)の製造にあてました。
 キャンプギアブランドOUROBOROS(ウロボロス)のS字カラビナにはバネが使われています。これは勉強会で知り合った石川製作所のバネを使っています。プロフェッショナル人材の外部専門家の活用も勉強会で知り合った仲間からの情報提供がキッカケであり、外部リソースを活用した「あいちの注目企業」です。

取材を終えて

 110t~140tクラスの成形機を導入したことにより、生産能力がアップしました。外観ではなく工場内部に力を注いでリフォームしたことが今日につながっています。


側島製罐株式会社HP
https://sobajima.jp/company/

株式会社石川製作所
https://www.ishikawass.co.jp/index.html