技術の広場

2022.11.01
リサイクル繊維を用いた不織布の作製
あいち産業科学技術総合センター 三河繊維技術センター
蒲郡市大塚町伊賀久保109

1.はじめに

 近年、環境に対する意識の高まりと共に持続可能な社会の実現が求められています。これは、資源・エネルギー等の需要の増大、気候変動を始めとする環境問題の深刻化等を受け、これまでどおりの大量生産・大量消費では限界を迎えると言われているためです。これからは資源を循環させることにより、製品と資源の価値を可能な限り長く保全・維持するサーキュラー・エコノミー (循環型経済)にしていくことが求められています。 このためには、新たな資源投入量を抑制し、消費活動後の製品の回収・リサイクル等により新たな製品へとつなげていく取組が必要となってきています。
 そこで今回は、当センターで保有している3種類の装置(反毛機、カード機、不織布製造装置(ニードルパンチ機))を使用し、製繊時に出た残糸を用いて作製した不織布のサンプル形状と、使用した装置の概要についてご紹介します。

2.繊維のリサイクルに使用される装置

1.反毛機

 反毛機とは、各種繊維を開繊(繊維をほぐすこと)する装置です(図1)。のこぎりの刃のような針が植えられたドラムにより、原料を引きちぎりながらワタ状にしていきます。ここで開繊され、ワタ状になった原料をファンで吸い込み、所定の位置までダクトを通して送ります。通常の工程では、荒打ち→中打ち→仕上げのように種類の違う複数のドラムを通して繊維をワタ状にしていきます。当センターの反毛機は中打ち用の回転刃が取り付けられたドラムが一つ付いたタイプです。
  図2は反毛機にかけた残糸のサンプルです。糸を10cm程度にカットした後、図1の反毛機に10回通しています。

図1 当センター所有反毛機(左) 図2 残糸から作製した反毛綿(右)

2.カード機

 カード機は、ワタ状に開繊された繊維の方向を引き揃えてウェブ(繊維をシート状に広げたもの)にするための装置です(図3)。針の付いた複数のローラー間にワタを通し、繊維をくしけずって繊維の方向を揃えます。ローラーを通って繊維方向の揃ったウェブを後方のドラムに巻き付けてサンプルを採取します。より均一に、繊維方向を整えたり材料を混合したい場合は、複数回カード機を通します。通常はこれを積層して不織布の原料とします。
  図4は図2の反毛綿をカード機にかけたサンプルです。カード機に2回通して作製しました。

図3 当センター所有カード機(左) 図4 カード機を通して作製したウェブ(右)

3.ニードルパンチ機

 ニードルパンチ機は、ウェブの繊維を針で突き刺すことで、繊維同士を絡ませてフェルト状の不織布をつくる装置です(図5)。表面に微小な突起(バーブ)のある針(ニードル)でウェブを上下に繰り返し突き刺して、繊維同士を機械的に上下に絡ませます。パンチングの回数が増えるにつれて、繊維の絡みが進行して不織布の引張強度は向上し、伸度は低下します。また、ウェブの投入方向によっても不織布の強度は変わります。
 図6は図4のウェブをニードルパンチ機にかけたサンプルです。

図5 当センター所有ニードルパンチ機(左) 図6 ニードルパンチ機を通して出来た不織布(右)

3.おわりに

 本報では、繊維のリサイクルに用いられる反毛機、カード機、及びニードルパンチ機について紹介しました。これらの装置は、あいち産業科学技術総合センター三河繊維技術センターにて機器貸付で利用することができます。ご興味のある方はお問い合わせいただき、新商品開発等にご活用下さい。

参考文献
1)繊維産業のサステナビリティに関する検討会 報告書 〜新しい時代への設計図〜
経済産業省 製造産業局⽣活製品課
2)繊維リサイクル産業「反毛」について 繊維学会誌 Vol.64,No.7(2008)
3)不織布の基礎と応用 日本繊維機械学会・不織布研究会編