技術の広場

2022.09.01
包装貨物及び容器の圧縮試験について
産業技術センター 環境材料室
愛知県刈谷市恩田町一丁目157番地1

 包装貨物及び容器の圧縮試験は、保管及び輸送中の積圧荷重に対して十分な保護性を有しているか確認するための試験です。試験には容器自体の圧縮強さを調べるための「空容器の圧縮試験」と圧縮荷重を加えて内容品の損傷を調べるための「包装貨物の圧縮試験」などがあります。当センターでは「空容器の圧縮試験」が依頼試験の大半を占めています。これは容器が潰れるときの圧縮荷重を把握し、保管及び輸送中の包装貨物の積み段数などを管理することで、荷崩れ等の輸送事故の防止に役立つからです。  
 しかし最近では、「包装貨物の圧縮試験」や包装貨物に所定時間荷重を加え続ける「積重ね荷重試験」のニーズが増しています。これは実際の輸送環境に近い状態で評価することが求められているからだと考えられます。そこで本解説では、JIS Z 0212 包装貨物及び容器―圧縮試験方法1)で規定されている「空容器の圧縮試験」、JIS Z 0200 包装貨物―性能評価試験方法一般通則2)で規定されている「包装貨物の圧縮試験」、「積重ね荷重試験」の3試験の内容について紹介します。

1.空容器の圧縮試験

 空容器の圧縮試験は容器自体の圧縮強さを調べる試験です。圧縮試験は図1のような圧縮試験機を用いて最大荷重と圧縮量を測定します。圧縮速度は毎分10±3mmとし、木箱やスチールボックスなど剛性が高い容器の試験は速度を緩やかにして行います。試験個数は5個以上が望ましいとされています。

図1 圧縮試験機(最大荷重:100kN)

2.包装貨物の圧縮試験

 包装貨物の圧縮試験は圧縮荷重による内容品の損傷を調べるための試験です。空容器の圧縮試験と同様に図1のような圧縮試験機を用いて行います。試験後の包装貨物の合否判定については受渡当事者間で決めています。試験の圧縮速度は空容器の圧縮試験と同じ毎分10±3mmです。試験個数は3個以上が望ましいとされています。試験は式(1)で計算した荷重を包装貨物に加え、荷重を加えた後はすぐに荷重を取り除きます。
F=9.8×K×M×n ・・・式(1)
F:荷重(N)
K:負荷係数
M:包装貨物の総質量(kg)
n:流通時の最大積重ね段数(最下段を含まない最上段までの段数)
 式(1)で使用する負荷係数は表1のように規定されており、保管条件の程度によって3つの保証レベルに分けられています。この負荷係数は各保管条件の荷重係数を掛け算したもので、例えば、保証レベル1の場合には「負荷係数=2.0×1.9×1.9=7.2」となります。また、保管条件がある程度想定できる場合は、荷重係数の組合せを異なる保証レベル間で変更して負荷係数を求めても良いことになっています。

表1 圧縮試験機による圧縮試験を行う場合の負荷係数

3.積重ね荷重試験

 積重ね荷重試験は包装貨物に静的な積重ね荷重を24時間加えて、包装の保護が適正であるかを調べる試験です。包装貨物に圧縮盤を用いて所定荷重を加えて行います。試験後の合否判定については、包装貨物の圧縮試験と同様に受渡当事者間で決めます。また、積重ね荷重試験では必要に応じてパレットなどを圧縮盤と包装貨物の間に挟み、試験を実施することもあります。試験個数は3個以上が望ましいとされています。試験で加える荷重は包装貨物の圧縮試験と同様で式(1)を用いて計算をします。ただし、負荷係数Kは表2の値を使用します。

表2 積重ね荷重試験を行う場合の負荷係数

4.おわりに

 圧縮試験の課題として、「包装貨物の圧縮試験」と「積重ね荷重試験」の等価性が証明されていない点があります。両試験の比較では、「包装貨物の圧縮試験」の圧縮量の方が小さくなる傾向にあると報告されています3)。また「積重ね荷重試験」は利便性を考慮して試験時間を24時間にしているため、長期保管の場合との相違が課題であることも報告されています4)
 今後は、多様に変化する物流現場の中で、実際に起こっている現象を忠実に再現した試験を行い解明することにより、上記した圧縮試験の課題などの解決に取り組んでいく予定です。

参考文献
1) JIS Z 0212(1998) 「包装貨物及び容器-圧縮試験方法」
2) JIS Z 0200(2013) 「包装貨物-性能試験方法一般通則」
3)小笠原ら:日本包装学会誌、23(5)、p.369(2014)
4)斎藤ら:日本包装学会誌、25(1)、p.37(2016)