あいちの注目企業

2023.03.01
絵本作家と共に、誰もが絵本を楽しめる世界へ
株式会社 三恵社
代表取締役社長 木全 俊輔
名古屋市北区中丸町2丁目24番地の1

■会社の沿革

 株式会社三恵社は創業60年の会社で、出版・印刷・デザイン企画などを手掛けています。地下鉄名城線の黒川駅から北へ、または地下鉄鶴舞線の庄内通駅から東へ、車で約5分の場所にあります。
 1963(昭和38)年に「印刷の三恵社」として名古屋市西区で創業しました。1969(昭和44)年5月に法人として組織変更を行い、株式会社三恵社を設立。そして、1975(昭和50)年2月に名古屋市北区中丸町に現在の本社と工場を移転しました。
 1996年(平成8)4月に出版事業部設立、2004年(平成16)6月に東京営業所開設(その後2018(平成30)年1月に移転)、2019(令和元)年に工場(SANKEI LAB.)の移転を経て、現在に至っています。

 創業者の木全孝清氏は飲食店向けの印刷会社として、当時では珍しい多品種小ロットの印刷と飲食店の独自性を表現するデザインで事業を拡大させました。2001年8月に二代目の社長に就任した木全哲也氏は、就任前から出版事業への進出を図り、印刷ノウハウを持つ出版社として、新しい出版モデルを確立しました。
 2020年4月より木全俊輔氏が三代目の代表取締役社長に就任し、現在に至っています。(以下:木全社長)

 木全社長は、自社で印刷機械を持つ出版社としての強みを活かして、大学の教育支援をはじめとした少部数出版のビジネスを進めるとともに、小さな市場に特化した質の高い商品を提供する複数の事業展開ができる会社組織を目指しています。

■アイデアを具現化した新商品の一例

 2022年に、出版業界の仕組みを学ぶためのカードゲーム『返本or実売(デッドオアアライヴ)』を開発し、「ゲームマーケット2022春」で販売しました。
 新作として『ゾンビラン』を制作しており、2023年4月9日にウインクあいちで行われる「名古屋ボードゲーム楽市」、2023年5月13日に東京ビッグサイトで行われる「ゲームマーケット2023春」へ出展予定です。

■社名の由来

 「三恵社」とは、創業者が考えた「三つの恵み」に由来しています。これは「経営理念」の中でも表現されています。

【経営理念】
創造する精神~Creative Spirits~
 私たちは常に創意工夫をもって、お客様に貢献します。
 天の恵み:私たちは時代の変化を見逃さず、先見性を持った提案でお客様に貢献します。
 地の恵み:私たちは環境に配慮し、新市場を生み出すことで、地域の発展に貢献します。
 人の恵み:私たちは縁や和を大切にし、人財を育て、社員が幸せになる企業を目指します。

■どこに注目 県内に同業他社が少ない

 三恵社の事業を語るうえで欠かせないのは、出版事業です。愛知県下には印刷会社は多数ありますが、出版社は非常に少ないです。そのうえ、少部数からでも出版できるサービスは全国でも類を見ません。
 出版には「商業出版(企画出版)」「自費出版」「協力出版」の3タイプがあります。商業出版(企画出版)は、出版社が発行にかかる費用を負担する方式です。ほとんどの方が「出版」と聞いてイメージする発行方法は、こちらに当てはまります。自費出版は、著者自身が発行にかかる費用を負担する方式です。協力出版は、著者と出版社が発行にかかる費用を負担しあう方式です。先述の「商業出版」と「自費出版」のちょうど中間にあたります。
 これら3タイプの出版方法のうち、三恵社では主に協力出版に力を入れています。三恵社の協力出版の特徴は、印刷会社である強みを活かした、少部数からでも出版できるサービスです。流通販売に必要な部数だけを発行することで初期費用を抑え、在庫に応じて都度増刷を行う、著者にも出版社にもリスクの少ない仕組みです。絶版や過剰在庫がなく販売し続けることができ、環境にも配慮されています。
 通常、商業出版では大量部数の印刷が必要になるため、市場在庫が減っても先の売れ行きを見越して増刷を行わない場合もあります。また、自費出版では増刷のたびに費用がかかり、著者の負担が大きくなってしまいます。こうした出版の常識を、印刷会社ならではの発想で解決したことで、今では出版点数が2500点を超えるほど大きく成長した事業に発展しました。
 以下の写真はカラーオンデマンド印刷機です。オンデマンド印刷は、必要な時、必要な分だけの印刷することができるのが特徴です。「版」を作って大量に同じもの印刷するオフセット印刷より小回りが利きますし、少部数の場合は低コストで印刷が可能です。この印刷機があるため少部数での出版サービスが実現できています。

■どこに注目 絵本出版に進出

 2012年、出版業界全体が陰りを見せ始める中、社員から絵本を出版のサービスに加えたいという提案がありました。そこで出版業界の動向を調べてみると、出版全体の売上は年々減少する一方で、絵本の売上だけは伸びていることがわかりました。2000年を起点とした売上高の推移では、2018年時点で、ほかの出版ジャンルがすべて減少しているのに対して、絵本(児童書)は約1.5倍の売上増となっています(KDDI総合研究所の調査レポートより)。
 こうした市場状況を踏まえ、絵本の出版にチャレンジすることを決めたものの、絵本とは縁がなかった三恵社が、どのように参入すべきかと思案することになりました。まず立ちふさがったのは、製本の壁でした。そもそも絵本は、子どもが手荒く扱っても壊れにくくするために、硬い表紙の上製本が一般的です。当時の三恵社には上製本の設備がなかったため、「ものづくり補助金」を活用して設備を導入し、少ない部数を半自動で効率よく製本できるノウハウをゼロから構築していきました。

 次の壁は、絵本の内容でした。市場では絵本の売上が増えているとはいえ、売れる保証はありません。当時の三恵社は絵本作家とのつながりもなく、たとえ出版社が費用を負担して発行する商業出版で絵本をつくったとしても、高いリスクが予想されました。そこで注目したのは、子どもに届けらえるという特性。大人が読み聞かせるため、親子三代にPRできる広告媒体として、企業の想いや商品・サービス、キャラクターを紹介する絵本を提案していきました。見事商品化にこぎつけた1作目は、八丁味噌をテーマにした『ひろくんとオバケとはっちょうみそ』。QRコードを挿入することで、絵本のストーリー上に描き切れなかった企業情報を伝えることができ、「絵本を読んで子どもが味噌汁を飲めるようになった」との声もたくさん届いて好評でした。その後も、ポッカサッポロフード&ビバレッジの『なんじゃ?にんじゃ?レモンじゃ!』、カクダイ製菓の『クッピーとラムのたのしい森のピクニック』など、地元に馴染みのある食品製造業を紹介する絵本をはじめ、様々な企業の絵本を発行してきました。

 クッピーラムネのキャラクターをモチーフにした絵本『クッピーとラムのたのしい森のピクニック』は、一般販売に加えて、関東の小児科病院3,000件へ寄贈しました。寄贈した絵本にはアンケートフォームへアクセスできるQRコードを挿入し、アンケートに答えると絵本とラムネがプレゼントされるキャンペーンを行いました。このキャンペーンは反響が良く、月に60件ほどの応募がありました。
 他にも、地元の自治体が運営する「名古屋港水族館」「東山動物園」の絵本や、「愛知県尾張旭市」「愛知県名古屋市守山区」「鹿児島県曽於市(そおし)」など地方自治体そのものを紹介する絵本も手掛けています。

■どこに注目 絵本作家育成の教室を開設

 絵本も通常の出版と同様、商業出版(企画出版)の方式を採られることがほとんどで、実績があったり名が知られていたりする、売れる見込みのある一部の作家しか、なかなか出版にこぎつけることができません。そのため、新人作家が世に出づらいことが絵本業界の特徴です。三恵社では、これまで出版で培ってきたノウハウをもとに、絵本も少部数で発行できる仕組みをつくり、絵本作家デビューの手伝いをしてきました。しかし、中には絵本作家を目指してはいるものの、絵に自信がない、ストーリーづくりが苦手、その両方に不安を抱えるなどといった悩みを抱えていて、出版に踏み出せない方がいることも明らかになりました。「より多くの方の絵本作家デビューの夢をかなえるため、三恵社自身で作家を養成していきたい」と考えた木全社長は、事業再構築補助金を使って新工場(SANKEI LAB.)の3階を改装し、絵本作家の学校の設立を目指しました。2023年夏に開校予定です。

 カリキュラムは弊社の取引先である東京の絵本教室と協力して作りました。ストーリー制作やイラストの基礎を学ぶのはもちろん、自身のオリジナル絵本を完成させます。卒業後は三恵社の仕事を依頼したり、絵本作品を持ち込んでもらったりして、継続的な関係性づくりにつなげていきたいと木全社長は考えています。

木全社長がYouTubeで「絵本作家デビューの夢の実現をお手伝い」と、「絵本で企業PR」というタイトルで三恵社の絵本事業の説明しています。

プロ作家と作る絵本 Co-Labo 絵本と企業PR
八丁味噌(絵本の中にQRコード挿入) クッピーラムネ ポッカサッポロ 等
企業・団体のオリジナル絵本をプロ作家と制作! | プロ作家とつくる絵本 Co-Labo(コラボ) (colabo-ehon.com)

絵本のデータ制作から印刷・製本、販売流通まで一貫したサービスをご提供致します。
https://www.sankeisha-ehon-shuppan-koubou.com/

「オンリー・マイ・絵本」は、あなたの大切な人へ、思いを伝えるギフト絵本です。出産祝いに、誕生日のプレゼントに、入学祝いのときにお子様やご友人など、贈るお相手のお名前、誕生日などを入れることができます。想いを込めた「世界でたった1冊の名入れ絵本」を、大切な人へ贈ります。オンデマンド印刷だからできる技です。
https://www.sankeisha.com/only-my-ehon/index.html