あいちの注目企業

2022.11.01
会社の将来を見据え、魅力あふれる組織にするために
株式会社 山田製作所
代表取締役 山田 英登
あま市花正七反地19番地

会社の沿革

 株式会社山田製作所(以下:山田製作所)は、1970年の創業以来約半世紀にわたり精密油圧部品(ポペット・プランジャー・スプール)を製造し続けてきた、国内では数少ない研削専門メーカーです。
 砥石の成形技術を柱に、数多くの砥石と研削盤、更に独自の治具を用いた外径同時加工、内・外径同軸精密加工をコア・コンピタンスとしています。また、1μ(ミクロン=0.001mm)精度の製品を多品種少量生産(50~10000個/ロット)可能な技術を有しています。

1970年   7月愛知県海部郡美和町大字花正(現・あま市花正)において山田製作所創業  山田武彦 代表取締役就任
1986年   5月株式会社山田製作所に組織変更
2009年   7月ISO9001:2008 移行完了
2014年   5月山田英登 代表取締役就任
2017年   1月株式会社山田製作所第3工場稼働開始
2018年   7月ISO9001:2015 移行完了
2019年   6月はばたく中小企業・小規模事業者300社(中小企業庁)に選定
2020年 10月地域未来牽引企業(経済産業省)に選定
2022年   4月愛知県「あいち女性輝きカンパニー」に選定

●山田製作所 会社の歩み

●丸い盾は「はばたく中小企業・小規模事業者300選」の証

事業承継

 山田英登さんは大学卒業後他社で3年程働いた後、2004年に入社しました。その時はベテラン職人社員十数名の事業規模でした。2007年に専務取締役に就任されたころから「選択と集中の戦略・戦術」が必要と考えて前社長に話をしますが受け入れらません。ここからバトルが始まりました。
 山田英登さんは研削に必要な機械を残し、必要のない機械を独断で破棄する大胆さも発揮しました。2011年には在籍していたベテラン職人社員が0人になりました。もちろん山田英登さんの考えについていけないのが理由でした。しかし、現場は回っています。何故なら新たな人材の活躍があったからです。
 2014年山田英登さんは代表取締役に就任しました。(以下:山田社長)そして更に研削の特化へと邁進しました。入社後から15年間は前社長と毎日がバトル状態でしたがここ3年は友好関係へと変化しています。 事業承継から今日まで多数の補助金申請を山田社長ご自身で行っています。そして高い割合で採択されています。これは異なる業種の製品を扱っていることが要因です。それ以上に事業計画がしっかり練りあがっていることが根底にあります。

現在の取り扱い業種割合

 農機、ロボット、電動工具、自動車、建設機械、二輪車にバランスよく分けられています。偏りがないことが最大の特徴です。業界の景況に左右されないことが強みでもあります。
 東海地方は自動車産業中心のため、トヨタものづくり精神「カイゼン、カイゼンまたカイゼン」が根付いています。しかし、これは言われた通りのものづくりであります。山田社長は何とか一線を引きたいと考えた事業承継でした。

どこに注目 その1

 「女性活躍」「デザイン経営の考え」「DX」「IoT」
 2000年に入り少子高齢化が叫ばれていました。必ず人手不足の問題に直面するため女性活躍を考えました。ベテラン職人の仕事を分解して単純作業とスキルが必要な作業に区分して単純作業を新しく採用した社員に任せます。スキルが必要な作業も手順書、マニュアルを整備することで徐々に誰でもできる標準化をしていきました。そして休憩室兼研修室の整備です。カフェテリア風の休憩室兼研修室が工場内にあるとは想像が出来ません。また、この休憩室兼研修室で定期的に研修を実施しています。

 ロゴや企業理念をデザイン思考から刷新する考えを取りいれて「企業理念」「社是」「経営方針」「品質方針」「ビジョン」を設け、研修を通じてその浸透を図りました。特に注目するのがビジョンに記載されている内容です。「研削にこだわり、ミクロンレベルで’まん丸’をつくりだす」「全社員 取引先 地域との’和’を大切にする」「創意工夫を受け入れ循環への’輪’を共鳴する」です。

 女性が十分に仕事のできるソフトとハードが整えば女性の採用が容易になります。それは製造業の経験が全くない歯科助手、事務職、保育士の資格保有者、飲食業など様々な業種から応募があり採用、定着につながっています。そして「産業用ロボットに特化したウェブマガジン」の取材を受けました。この記事をご覧になったファナック社長の山口様が、昨年末じきじきにご来社くださいました。時代の変化に合わせ形を変えて技術を継承していく考えに共感して頂きました。

 「DX」(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術やデータを活用して、業務プロセスやビジネスモデル、会社の風土、組織構造などを変革できます。「DX」を進めていくためのキーワードの1つに「IoT」があります。IoTは「モノのインターネット」とも呼ばれており、DXと深い関係があります。
 「DX」「IoT」は機械操作でデータの呼び出しが瞬時にでき、しかもタッチパネルのため入力負担がありません。そのため製造現場経験の乏しい女性も作業が出来ます。スキルが上がればロボットのティーチングも行います。

 工場内に設置している機械の稼働状況をモニター画面に映しています。朝礼でその日の生産計画を確認して各人が目標に臨みます。品質検査室のモニターから機械の状況を把握できます。 「DX」の活用から製品ごとの製造原価把握ができるため、利益率の向上につながります。また、利益を確保した受注見積書作成にも反映できます。

どこに注目 その2 (これから目指すこと)

 「両利きの経営」
 「両利きの経営」とは、既存の価値観をベースとした「深化」の活動を否定するものではなく、「深化」と「探索」の活動を両立させることが重要と考えます。つまり既存の価値観そのものがいけないのではなく、それを問い直し新しい価値観を模索する活動を企業の中に取り入れます。そのため山田社長は全国の様々な業種の企業へ足を運びそのヒントを探しています。

 日本の企業は「知の深化」に偏る傾向があるため「知の探索」とのバランスをとることが重要です。DXと研削技術を繋ぎ、そこにビジョンに即したデザインや、様々な業種の要素を取り入れることで、製造業の魅力をより高めていければと考えております。

どこに注目 その3

 会社をより良く見せるための「ブランディング」
 カフェテリア風の休憩室兼研修室を設けて女性の採用に尽力しました。これにより求人応募が飛躍的に伸び、従業員の多数を女性が占めています。作業指示書、マニュアル、研修によりマルチタスクの女性が増えた結果育児休業もとりやすくなりました。(現在1名が育児休業から復帰、1名が産前休業予定者、3名が育児休業取得中)
  しかし、その効果も薄らいでいると山田社長は感じています。その打開策の例として「本当のカフェ」を設ける発想が必要と山田社長は考えます。現有の高い研削技術や製品をアピールする企業イメージ(コーポレートイメージ)を高めることを考え、その手段として私たちの工場を「魅力ある工場」として、工場全体をショールームにする計画を立てています。

どこに注目 その4

 「スキルがある女性の採用」
 家庭の事情等から出勤日数の少ない勤務あるいは1日の勤務時間が短い時短勤務を希望して就職活動されている女性の採用を増やします。写真は海外から調達した原材料です。これに携わったのが出勤日数の少ない働き方で採用された女性営業職です。現在、営業職は3名いますが全て女性です。

最後に

本社横に第4工場建設を計画しています。完成したときは工場全体ショールーム構想が始まっていると思います。会社の考えから製品に至るまで動画を使いながらホームページが作られています。ホームページを閲覧してください。