あいちの注目企業

2022.05.02
インターン学生を活用し国際社会へ通用するテント企業へ
株式会社丸八テント商会
代表取締役社長 佐藤 均
名古屋市中区栄5-7-10

株式会社丸八テント商会(以下:丸八テント商会)は名古屋市中区栄にあります。東新町の交差点から空港線を 300m 南へいった場所にあります。創業は昭和 26 年、その後昭和 61年に自社ビルを建設して現在に至っており、オンリーワンかつオーダーメイドをモットーにデザインから設計、施工までを一貫して行っています。老舗のテント屋でありながら、地元では愛知万博・中部国際空港・長島ジャズドリーム・星が丘テラス・ラグーナ蒲郡など、メジャーな場所では 2021 年東京オリンピック、スケートボード競技有明会場のパラソルをはじめ、ユニバーサルスタジオジャパン・ディズニーランド・トヨタ自動車など多数の施工実績があります。

どこに注目

取材するなかで注目したのは「学生インターン」の活用です。インターンといえば就活の一環として捉えられがちですが、丸八テントのインターン生は就活のためだけでなく、自分の成長のために参加しています。そのため、就活終了後にインターンを始める学生も少なくありません。また、大学生だけでなく高校生や大学院生、外国人留学生もインターンとして受け入れており、その対象が広いことに驚きました。
今回の取材では、学生インターンのような若手が老舗企業にイノベーションを起こすという点に着目しました。

取材の状況

本社ビル 1 階はガレージ・2 階が事務所となっています。入るとすぐに製品紹介と会社商会の棚が壁面にあります。オリンピックライセンスを取得した商品などが並べられています。その奥が事務所です。3 階はミーティングルームとなっております。今回の取材はこの 3 階で行いました。代表取締役 佐藤均社長(以下:佐藤社長)と 2 人の女性社員、外国人・日本人合わせて 2 名のインターン生が参加しました。

アフリカ人留学生(JICA)とインターン学生
インターン学生が商品開発を行う様子

・佐藤社長(中央の男性)これまでインターン学生 91 名を受け入れ、その中で 8 人が社員として会社の扉をたたきました。ここでインターンをし、生のビジネスを学ぶことで、新卒でも社歴 5~6 年の中堅レベルで入社することができます。また、その学生インターンの制度が知りたいと社外からも沢山の方が視察にきます。例えば、愛知県副知事、北海道商工会議所、静岡よろず支援センター、日本政策金融公庫、商工中金、北銀幹部、大学・高校の先生、中小企業の社長などが来社しました。

・伊藤さん 入社 7 年目(インターン生 5 代目) 学生インターンからストレートで入社。インターン時代は補助金を獲得し、総合カタログを作成しました。また、セカンドインターンとして税理士事務所へ行き、インターンのマニュアル化をゼロから行いました。現在では藤田医科大学、ジブリパークなどのテント施工に携わっています。

・前田さん 入社 1 年目(インターン生 75 代目)2020 年 6 月からインターンを開始し、その後ストレートで 2022 年 4 月に入社しました。インターン生時代は得意な英語を活かし、インド事業や留学生インターン受け入れに向けてアフリカ 17 か国に向けて Zoom で 2 時間英語でプレゼンをしました。また複数の補助金申請にも携わっており、現在は高齢の職人が働く工場のマニュアル化を日本語だけでなく、技能実習生用に英語でも行っています。

・田中さん インターン 1 か月目(インターン生 91 代目) ブログ、商品開発、海外事業を担当。情報発信として毎日 10 件以上のブログアップをこなしつつ、会社のプロジェクトにも参加しています。取材中に丸八テント商会が施工した現場写真などをパソコンからすぐにプロジェクターに映すなど、日常の業務に関わっていないとできない対応に驚きました。

・コスキーさん 留学生インターン 九州大学の博士号を取得後、丸八テントで 3 か月間インターンに参加。国際協力機関 JICA のプログラムで参加しています。現在は、アフリカへの販路拡大のための市場調査、新商品の開発、ソフトウェアをつかったテントのイメージ図作成に携わっています。

取材中の社長の口癖

「弟子を育てる」という言葉が何度も発せられました。インターン学生には社長の右腕として、情報発信から電話対応、見積、納品までのアルバイトでは任せてもらえない一貫した業務を、責任を持たせて任せることで、社長自らテントづくりだけではなく人づくりも同時に行っている。弟子の不始末は師匠の責任と腹をくくってインターン学生と接しているからこそ出来た言葉だと思います。

なぜインターン学生なのか

多くの中小企業の社長は新規事業を行いたくても、一緒に実行する人材や時間が足りないといった問題を抱えており,そのような問題を解決するために熱意ある学生をインターン生として受け入れることで、新規事業を一緒に進めていくことが出来るからです。また、学生は社長の右腕として、経営者目線のビジネスを学ぶことが出来るので、企業と学生との間で WINWIN な関係を築いていることが丸八テント商会のインターンシップの特徴です。

ゴールドマン・サックス中小企業経営革新プログラムとの出会い

経営革新プロジェクトを実行して日本全体における「中小企業の革新モデル」を生み出すために、大学生(もしくは若手社会人)が参加する長期実践型インターンシップ制度を活用し、地域のある中小企業と大学生の挑戦を支援することを目的に実施するプログラムです。丸八テント商会は、名古屋のテント屋「海外市場開拓」2020 年のオリンピックを好機に初の海外進出を目指すことを題してこのプロジェクトに応募し採択されました。

クラウドファンディング

2016 年よりインド事業を開始しています。インドでは熱波が原因で毎年多くの人が亡くなっており、丸八テント商会の遮熱技術で人を助けたいという想いからスタートしました。インターン学生とインド人が共同で事業を進めてきた結果、ゴールドマンサックス中小企業経営革新プロジェクトで学生がプレゼンテーションを行い、結果、投資家から目標額の 150万円の倍の 300 万円をクラウドファンディングで集めました。

インターン学生と電話

インターン学生の日常業務として、電話対応とブログ更新があります。電話対応では、会社に掛かってくる電話をインターン学生が一番にとります。また、電話対応から見積り作成、納品までも学生が行います。ブログ更新もインターン学生が行います。ブログを書くためには会社に関する知識、現場を知らなければ書くことが出来ないので、自ずと情報収集の必要性を学びます。ブログ更新は1日 10 件、毎月 1000 件を目標に更新を行っており、その結果、多い日では1日に 10 件もの新規問い合わせがあります。これらの業務を雑巾がけと呼んでおり、各プロジェクトで力を発揮するための基礎練習となっています。

女性中心のチーム

業界的にもまだまだ男性社会といわれるテント業界ですが、丸八テント商会ではインターン学生から新卒社員になった女性を中心に日々の業務や営業、現場などあらゆるフィールドで活躍しています。近年「テントが空間をデザインする」という概念が生まれ、女性の感性による新しいデザインや情報発信力によって社内だけでなく業界に新しい風を吹かせています。また、オリジナルで開発した商品である「西陣帆布」や「西陣カーボン」(経済産業省の JAPAN ブランド育成支援事業に採択)のプロデュースや、新たな取り組みを行っていくためのクラウドファンディングを活用した資金調達などは、この女性チームが担当しています。

注目した社長の言葉

・学生は「原石」です。しかし、多くの学生は自分の能力をどのようにしたらお金に変えられるかというビジネス視点を学校では養いきれません。そこで、ビジネスの実践の場を提供し、一緒になって経営者目線を学ぶことで原石を磨くことができます。
・短期のインターンシップとは違い、丸八テント商会のインターンシップは 6 か月の「本気系インターンシップ」です。学生の成長と会社の成長の両方を達成させるために、社長はできるだけ会社の全てを見せ、学生としてではなく「経営者」として本気で業務に取り組んでもらいます。大事なのは時間軸と本人の成長したいという意思です。

その他 気になる作品

岐阜県の公立図書館「みんなの森ぎふメディアコスモス」に、伊東豊雄氏とのコラボ作品である巨大なランプシェードがあります。これをつくりあげるにあたり、地域の学生約 800 名と一緒になってつくりあげました。このランプシェードは丸八テント商会の「ものづくり」と「人づくり」の原点として代表的な施工事例として語り継がれています。

東京ステーションギャラリーで開催されて隈研吾の展示会「くまもの」にはエアーテントをヘリウムガスで浮かせている「浮庵」は丸八テント商会と有名建築家とのコラボです。

これからの注目

老舗企業でありながら、創業以来のスローガンである「一本の糸から布へ、布から膜構造へ」をモットーに常に新しいことに挑戦し続けるスタンスはまさに「老舗ベンチャー企業」といえます。これを基盤に今後はインドやアフリカなど老舗企業がグローバルな事業拡大にチャレンジしていきます。

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